鈴鹿サーキットを彩ったラクスルの挑戦:角田選手の「のぼり旗」が色鮮やかだった理由
2025.05.27
ユースケース

目次
「のぼり旗600本」「巨大横断幕24枚」「手持ちフラッグ9万本」。F1日本グランプリに華を添えた場内装飾による演出。担当したのは、ホンダモビリティランドの「サステナビリティパートナーであるラクスル株式会社(以下、ラクスル)です。
2025年F1日本グランプリは、開催直前に角田裕毅選手が日本人ドライバーとして初めてチャンピオンチームへ昇格するという歴史的な大会でもありました。来場された方には、角田裕毅選手ののぼり旗や巨大横断幕がひときわ色鮮やかだったことを記憶している方もいらっしゃるかもしれません。そこには理由があります。
今回の記事では、開幕直前の仕様変更から追加装飾品制作を間に合わせた熱意と連携の舞台裏について、ラクスル株式会社 印刷事業部 部長 大山雄也氏にお話を伺いました。
「のぼり旗」や「巨大横断幕」などを通じた、現場づくりで協業する
――今回のF1日本グランプリにおける、貴社の装飾物に関する取り組みについて教えてください。
大山氏 今回、私たちラクスルは、ホンダモビリティランドと「サステナビリティパートナー契約」を通じて連携し、F1日本グランプリで使用される場内装飾の一部を担当しました。
私たちのような印刷EC事業者が、いわば「現場づくり」に深く関わるということは、これまでにない取り組みです。
ホンダモビリティランドとの協業には大きく3つの形態があると思います。1つ目は大手スポンサーのような支援型、2つ目がスタートアップとのコラボレーション。そして3つ目は今回私たちが取り組んだ「ビジネスパートナー」としてのプログラムであり、最もマーケティング的な色合いが濃い取り組みです。
この枠組みでは、F1やサーキットが抱える課題に対し、外部の知見やサービスを持ち込んで解決する共創型のパートナーシップが求められています。ラクスルも単なる印刷業者ではなく、どうすれば「場」をより良く演出できるか、という視点で取り組みました。
――具体的にはどのような取り組みとなりましたか?
大山氏 「のぼり旗」や「巨大横断幕」等を中心にサーキットの雰囲気づくりを支援しました。例えばドライバーの「のぼり旗」600本、「巨大横断幕」24枚を制作。「のぼり旗」は全20名のF1ドライバーのビジュアル入りで、それぞれ2パターンずつ、計40種を15本ずつ制作しました。

「のぼり旗」600本は、駐車場から会場のメイン動線、入り口付近、さらにはスタンド裏の階段に至り、必ず来場者の目に留まる場所に設置しましたが、これは単なる広告物ではなく、来場者の動線に沿って配置された「ブランド体験」そのものです。どこを歩いても「F1に来ている」という高揚感を視覚的に感じてもらうこと、印刷物が「導線」になることが狙いです。
――「巨大横断幕」も圧巻でしたね。
大山氏 ありがとうございます。ひときわ目を引くグランドスタンドの裏側に掲げられた横断幕は全長85mに及び、角田選手をはじめとしたドライバー20名の顔が並ぶ迫力あるプレゼンテーションとなりました。

角田選手のトップ昇格の裏では、装飾物の「デザイン変更」が急きょ発生
――今回のF1日本グランプリ、印象的だったのは角田裕毅選手のトップチーム昇格ですね。
大山氏 そうですね。2025年3月27日(木)17時15分に角田選手がレッドブルのトップチームに昇格を果たしたと公式発表がありました。まさにF1日本グランプリを目前に控えたタイミングで、私たちラクスルにとっては装飾物の急なデザイン変更が求められることになりました。
実は3月25日(火)の段階で、ホンダモビリティランドから「もしかしたら装飾物の仕様変更をお願いするかもしれない」という連絡がありました。具体的な内容は聞けませんでしたが、Web検索してみると、ニュースサイトでは角田選手のトップチーム昇格の可能性が報じられていたため、社内では「これはもしかすると角田選手関連かも」とざわつきました。
――公式発表後はどのような対応をされましたか?
大山氏 ホンダモビリティランドからは、角田選手を始めとした選手変更に伴う「のぼり旗」や「横断幕」のデザイン変更が必要となり、開幕前までに差し替えを「間に合わせることは可能ですか?」という相談連絡だったと記憶しています。
これらの仕様は、本来3月上旬、少なくとも中旬にはデザイン含めた仕様を確定しておくべきものであったため、「のぼり旗」は何とか間に合うかもしれないものの、特に「横断幕」の仕様変更は難易度が高く、開幕に間に合わせるにはかなり厳しいことが予想されました。
――それでも、大会当日に間に合わせることができたということですね。
大山氏 「のぼり旗」は4月3日(木)には設置され、「巨大横断幕」も到着し、翌4日(金)の朝には設置が完了しました。追加で印刷されたばかりだったため、他ののぼり旗が日差しで少々色褪せている中、角田選手の新しい「のぼり旗」は、他のものと比べてひときわ鮮やかな桜色を発色していたことが印象的でした。

熱い想いを実現させた、関係者の信頼関係とプロセスの透明化
――直前の変更をどうやって実現できたのでしょうか?
大山氏 正直申し上げて、確約はできませんでした。すでに印刷業者のラインも詰まっていましたし、規定サイズの「のぼり旗」追加でさえ、2ドライバーを2パターンの4種を各15本ずつで計60本を変更し、特注サイズの「横断幕」は出力やカット等の各工程の調整が必要でかなり複雑な状況でした。
ただ、私たちラクスルには、ネット印刷業界の成長とともに培ってきた印刷業者さまとの強い信頼関係があります。印刷業界が右肩下がりで低迷する中、ラクスルはネット印刷のプラットフォームとして、パートナーである印刷業者さまとともに成長してきました。今回は、この過程で培われてきた強固な信頼関係を活かすことで、何とか乗り切ることができるのではないかと考えていました。
加えて、今回はホンダモビリティランド含めて、デザイン変更に関わる各企業に熱い想いがありました。初めての日本人ドライバーのチャンピオンチーム昇格、ホームとなる日本グランプリ、そして初戦である、という状況です。しかも、実は角田選手が所属していたホンダレーシングスクールで当時所長を務められた方が、現在は大会装飾を担当するイベント部門に所属しているというタイミングも相まって、デザイン変更を角田選手の凱旋に何としても間に合わせるんだという強い想いを持っていたと聞きました。
ホンダモビリティランドとの取り組み初年度となるラクスルとしても、その想いに応えて何とかやりきりたいという一心で取り組みました。
――想いを実現するために、困難に立ち向かわれたわけですね。間に合わせるための工夫はどこにありましたか?
大山氏 プロセスの透明化を徹底しました。各種確認が必要となるデザインの納期が読めないことが一番の課題でしたが、発注者のホンダモビリティランドと、印刷やカット、出荷といった各工程の目線合わせを進めながら、何度もリアルタイムで情報共有し、発注者と受注者、そして印刷業者と多くの企業が携わる中で、一気通貫の意思統一がなされたチームを作ることで、デザイン確定後の作業を迅速に進めることができました。
とはいえ、何よりも間に合わせるんだという想いが各社に共通していたからこそ、その想いを現場に落とし込むことができ、成立した取り組みだったとも思います。
協業の狙いはネット印刷のイメージを変える特注品対応へのチャレンジ
――ラクスルといえば、ECで完結する印刷という印象があります。今回のような特注品対応も可能なことを初めて知りました。
大山氏 「ラクスル=紙のチラシ」というイメージが先行していて、チラシや名刺といった紙の印刷物を想起されることが多いのですが、実はこうした大型装飾や特注販促物も多数扱っています。特殊サイズや素材、屋外利用にも耐える仕様の制作も可能です。
ラクスルはネット印刷を手掛けるIT企業として、小ロットの消費者や中小企業を対象としたサービスのイメージが強いかもしれませんが、現在では大企業のニーズに対応したチームも存在し、特殊サイズや短納期、大量発注といった案件もカバーできる体制を整えています。
今回のようなイベント装飾も含めて、私たちラクスルは単なる印刷会社ではなく、販促・プロモーションのパートナーとしての位置づけを意識しています。
――のぼり旗や横断幕の他に、今回はどういった制作物がありましたか?
大山氏 当日ファンの方が手に持って振る「フラッグ」を約9万本制作しました。今回は協賛という形でご提供し、観客と一緒に場を盛り上げることができたのは嬉しかったですね。当日、一斉に振られるフラッグを見て、胸にくるものがありました。

この土台を活かして、さらなる量・クオリティで来場者に感動を
――ホンダモビリティランドとの協業を経て、今回の取り組みからの学びや今後の展望について教えてください。
大山氏 一番の学びは「本当に求められているものは何か?」という理解の部分でした。初回がゆえにデザインや仕様の落とし込みに苦労した場面もありましたが、それも含めていい経験になりました。
特に、短納期かつ高品質な装飾物を提供できる体制は、F1のようなグローバルイベントだけでなく、スポーツや音楽、展示会など様々なシーンに応用可能です、加えて、当社にとってはこういった協業によって得られる体験はとても貴重です。
今回の経験を通して、来年以降の協業に向けた確かな土台ができたと思っています。短期間でもやり遂げられたのは、ホンダモビリティランドと「対等なパートナー関係」を築けたからこそだと感じています。
2026年以降に向けて、この土台を活かして、より多くの来場者に感動を届けられるよう、量そしてクオリティを追求していきたいと考えています。

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