ラクスルとのサステナビリティパートナーシップで実現する、グッズのパーソナライズと在庫・廃棄ロスの解消

2025.04.02

ユースケース

目次

「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンに掲げ、産業構造の変革により世の中に大きなインパクトを生み出すことを目指すラクスル株式会社(以下、ラクスル)。

ホンダモビリティランド株式会社(以下、ホンダモビリティランド)との「サステナビリティパートナーシップ*1」の締結をきっかけに協業による取り組みが始まりました。それはどのように始まり、どのような未来を見据えているのでしょうか。

F1日本グランプリをはじめ、サステナブルな大会運営が強く求められるホンダモビリティランドにとって、ラクスルとの協業はどのような意味をなすのか、ラクスル事業本部 Marketing & Business Supply統括部 統括部長の木下治紀氏にお話しを伺いました。

*1サステナビリティパートナーシップ
鈴鹿サーキットやモビリティランドもてぎを運営するホンダモビリティランドが抱える社会課題の解決や環境負荷低減に繋がるように、サーキットを取り巻く環境を実証フィールドとして協業・共創の上で具体的な取り組みを実施していくもの

印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」

既存の印刷産業に飛び込み苦労した創業期。「組むとメリットがある」と思われる現在に至るまで

―ご経歴を教えてください。

木下氏 私は2016年に院卒としてラクスルに入社し、今年でちょうど10年目になります。入社以来、商品開発に5年ほど携わり、その後はM&Aで買収した会社のPMIに3年ほど取り組み、現在は印刷事業と大企業向けのビジネスラインの責任者を務めています。

―大学院を卒業してラクスルに入社したのは、何かきっかけがあったのですか?

木下氏 入社の動機は、「新しい産業やサービス、事業を創り出す仕事がしたい」という思いでした。大学院では半導体の研究をしていましたが、「世の中にインパクトを与えられるビジネスを、事業や経営の立場から作りたい」という想いを抱いていました。当時はゲーム会社やデジタルマーケティング関連の企業に注目が集まっていましたが、私はあえてリアルインダストリーで、そして日本の技術力を活かしながら新たな価値を生み出せる会社を探していて、その時に出会ったのが、まさに「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を掲げるラクスルでした。

―ラクスルのビジョンを体現する取り組みについて、ご紹介いただけますか?

木下氏 創業者の松本恭攝は、コンサルティングファームに在籍中、ある印刷会社のプロジェクトにアサインされて、印刷費のコストカットをどう実現するか検討していたそうです。印刷業界の多重下請け構造に疑問を抱き、水平分業型のプラットフォームを通じて、業界全体をアップデートできるのではないか、という発想に至ったと聞きます。

2009年の創業当初より、テクノロジーとビジネスモデルを掛け合わせることで、「アナログなBtoB領域を変えていく」ことを続けていたため、私が入社した当初でも業界内での評判は「なんだか怪しいベンチャー」という印象でした。

しかし、現在では「新しいことにチャレンジしていて、しっかり結果も出している企業」として認知が広がっていると感じます。創業期は、面白がってくれた異端な印刷会社の方々が協力してくださいました。皆さんに支えていただいて、当社の取り組みが少しずつ受け入れられ、徐々に広がりをみせてきたと考えています。

―既存産業へ飛び込んでいくのは、なかなかハードルが高いですよね。ぶつかり合いも多かったのでは?

木下氏 もちろん最初は「何も知らないのに口出しするな」と反発されたこともありました。私たち自身も未熟で、最初は「非効率だから変えましょう」といった感じで、上から目線で言ってしまった部分もあったと思います。

味方を増やすには地道な実績づくりに勝るものはありません。一緒に成功体験を積み重ねるうちに「ラクスルと組むとメリットがある」と考えてくださる企業が増えていきました。

スタートアッププログラムをきっかけに、協業姿勢に共鳴し、スピード感あるパートナーシップを締結

―今回、ホンダモビリティランドとの「サステナビリティパートナーシップ」を締結され、協業を開始されました。そもそものきっかけは何だったのでしょうか?

木下氏 ラクスルが、ホンダモビリティランド主催の「Startup Challenge」、これは鈴鹿サーキットが日本のモータースポーツビジネス及びサーキットにおける様々な課題をスタートアップのイノベーションによって解決を目指すというプログラムなのですが、これに参加したのがきっかけです。そこでサステナビリティについて、意見交換を進めるうちに「一緒にやれば面白いことができそうだ」という手応えがあったのです。

その後、グッズの収益をどう確保するか、ホンダモビリティランドからご相談をいただきました。ラインナップをどうするか話し合う中で、サステナビリティパートナーシップの打診がありました。

―サステナビリティパートナーシップの打診があって、実際に締結するまで、どれくらい期間がかかったのですか?

木下氏 だいたい1ヶ月くらいですね。通常はパートナーシップの話が正式に締結されてからリリースされるまで、1年かかってもおかしくありませんが、ホンダモビリティランドの意思決定がとにかく早かったですね。

特にホンダモビリティランドの担当者からは、気概のようなものが伝わってきました。会社を背負っていると感じで、当時は当社内でも話題になりました。そして、この思いは創業以来チャレンジを続けてきた私たちに共鳴するところがありましたね。

ホンダモビリティランドが持つ資産、ラクスルの技術や仕組みづくりとの掛け合わせから生まれる将来の可能性

―ホンダモビリティランドが運営する鈴鹿サーキット、そこで実施されるF1日本グランプリという世界的な人気コンテンツ、これにラクスルが培ってきたデジタル技術や仕組みづくりを組み合わせると、どんな可能性が広がるのでしょうか?

木下氏 1つは在庫ロス、そして廃棄ロスの解消が挙げられます。これはホンダモビリティランドが課題としてあげていた事項になります。

従来のやり方であれば、商品企画をして販売する。そして、もし残ってしまった場合は廃棄をするという流れになります。そのため、この工程を見越して商品ラインナップや価格付けが検討されることになります。

しかし、これでは廃棄ロスを懸念して、新しいグッズの販売などに二の足を踏むこともあるでしょう。しかし、廃棄ロスを懸念しすぎては、今度は在庫ロスを引き起こしてしまいます。

特に現在では、お客さまのニーズや好みが細分化されて、その嗜好にあうように各種グッズのパーソナライズ化が進み、従来の方法ではますます廃棄ロスや在庫ロスの発生が見込まれるような状況です。

―そこでラクスルの登場となるわけですか?

木下氏 その通りです。これまで当社が培ってきたデジタル技術や輸送を含めたオフライン領域での知見・つながりを活かしてパーソナライズ化を促進しつつ、データ活用による在庫ロス・廃棄ロスの削減にも取り組んでいきます。この取り組みでは、これまでの業界慣習にあるグッズ企画や販売方法を、根本的に変えられるのではないかと考えています。

もう1つは、鈴鹿サーキット、そしてF1日本グランプリ開催という世界有数のコンテンツをフルに活用できるよう、マネタイズのポイントをきちんと整理して作っていくことにあると思っています。

―確かに企業としては、経済的には在庫ロスも廃棄ロスも避けたいですし、昨今の状況からは廃棄ロスを削減し、0にすることは持続性の観点から強く求められますね?

木下氏 そうです。企業は、同じグッズをばらまくように売るということはなくなってきています。

当社としては本来、在庫ロス覚悟でできるだけ多くの発注をいただくことで当社売り上げが多く上がることになるため、数字上は望ましいとも考えられます。

しかし当社自体の売り上げ自体は下がるとしても、当社が携わる「取り組みそのものの価値」を高めること。これを優先的に考えます。当社がすべきことは協業により、相手企業、この場合はホンダモビリティランドの取り組みの付加価値を高めることだと考えています。

―現在、実際にはどのような取り組みが進んでいますか?

木下氏 今年はホンダモビリティランドと「2025春 鈴鹿サーキット オリジナルグッズ総選挙」を開催しました。これは鈴鹿サーキット初となるファン参加型のイベントです。例えば、まずTシャツのデザイン募集を実施し、その後ファン投票で販売するTシャツのデザインを決定するという取り組みをおこないました。

サイト上には50種類のTシャツデザインが選ばれましたが、投票上位のTシャツデザインが把握できている状況です。そのため、制作前からある程度の需要を把握できるため、過剰在庫を抱えずに済み、在庫ロスの回避にもつなげることができます。

そして、何よりファンの方が望んでいるものをF1日本グランプリの会場で直接提供できる機会を作ることできるのです。ファンの方々の好みに合わせたデザインを提供できるようになれば、より一層「欲しいもの」を「欲しいタイミング」で手に入れることができるという、“理想的な仕組みづくり”に近づくことになるのではないでしょうか。

デザインを募集してみると、社外からの熱量の高さだけでなく、社内の熱量で士気が高まるという経験もしました。ファンの方々からは応援メッセージをいただいたほか、社内からは「この大会に、自分たちが関わらせてもらえるのですか!」と、デザイナー中心に高いモチベーションで参加してくれました。大盛りあがりでしたね。

 ホンダモビリティランドと協業するからこそ、価値を最大限引き出したい

―今回のサステナビリティパートナーシップ締結を通じて、今後どのようなことにチャレンジしたいですか?

木下氏 繰り返しになる部分はありますが、必要なグッズを必要な数だけ作って販売して、在庫は極力出さない、これに挑み続けたいと考えています。

ESGの観点を踏まえると、やはり廃棄は無くした方が良いですし、在庫が無くなることはホンダモビリティランドの財務的な観点からも望ましいと思います。

また、現代は色々なものがデジタル化され、どんどんとサービスや製品などがパーソナライズ化しています。そのため、結果としてそれが各ユーザーにとってベストな選択となり、ユーザー満足度を高めて、それが更に企業のビジネス拡大にもつながるという流れがあります。

しかし、このデジタル領域で当たり前のことが、オフライン領域ではあまり起きていません。なぜ起きていないのかと考えると、印刷業界でいえば受け皿になるインフラがない状態だからではないでしょうか。

Tシャツを例にあげれば、一人ひとりが望むTシャツのデザインを作ろうにも、それを実現するための設備や物流の仕組みがありません。こういったインフラを構築するためにも、デジタルとオフラインの接点を作って、サプライチェーンを自動化して、商品をデリバリーできる仕組みを作っていきたいと考えています。

―最後に、このサステナビリティパートナーシップの価値は何か、教えてください。

木下氏 鈴鹿サーキットというホンダモビリティランドしか持っていない資産を活用できることです。鈴鹿サーキットという規模はもちろんのこと、地域や近隣自治体との関係性など、資産をもっているからこそ、協業によって実現可能なことがあります。

こういった協業による取り組みは、お金を払ったからといって簡単に実現することではないですよね。ご一緒できることは、とても価値のある機会だと強く感じています。

だからこそ、新しい取り組みを世に出していき、たくさんの、世界中のファンの方々に喜んでいただける可能性を高めていきたいですね。

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